WHO(世界保健機関)によると西アフリカでのエボラ出血熱による死者は1069人、感染が確認ないし疑われる患者は1975人に達した(8月11日時点)。治療法のないこの感染症の大流行に、日本の近隣諸国で最も敏感に反応しているのが中国だ。
中国政府が敏感な反応を見せる理由は他にもある。「感染源」と「ある食習慣」の存在だ。エボラ出血熱の感染源と考えられているのが「コウモリ」である。
感染症の専門家で元小 市保健所所長の外岡(とのおか)立人氏が解説する。
「コウモリはエボラウイルスの自然宿主であり、西アフリカにはコウモリを食べる習慣がある。過去に流行した際も、コウモリから人に感染したと考えられています。米紙ニューヨーク・タイムズが報じたところでは、WHOは今回の流行について昨年12月にギニア奥地の小さな村に住む2歳の子供がコウモリと接触して感染したのが発端だとみているようです」
エボラウイルスは他のウイルスと同様、加熱処理すれば死滅するが、「捕獲した段階や調理の際に感染する危険性が高い」と外岡氏は指摘する。
そして西アフリカ同様に、コウモリを食べる文化が存在するのが中国である。
中国本土にある広東料理店店主が語る。
「広東省周辺には野生動物を一般的な家庭料理として食べる習慣があり、市場でも食用コウモリが売られています。一部では高級料理の食材として利用され、クコの実や生姜と一緒に丸ごと煮込んでスープにしたりします。スープに浸ったコウモリの肉も食べる。繊維が細く、味はさっぱりとしていて鶏肉に近いですよ」
中国では2002~03年にSARS(新型肺炎)が大流行したが、そのウイルスの自然宿主もコウモリだったとする説が有力になっている。SARS流行後、広東省では「野生動物の食用禁止」を地方政府が呼びかけるなどして「コウモリ食」を止めさせる取り組みがあったが、「近年では以前の習慣が当たり前のように復活している」(同前)という。(>>2に続く)
そうした中国人の食習慣は、もともとコウモリ食の文化がある西アフリカに住む中国人にとっては今も日常と考えられるし、それによって感染リスクが高まるとの指摘もある。前出・富坂氏の話。
「中国人は海外進出しても現地に溶け込もうとせず、自分たちの食生活や生活習慣を変えようとしない。コウモリなどの野生動物を食べる習慣のある人たちは、やはり現地で調達するでしょう。その意味では、西アフリカで中国人がエボラ出血熱に感染する危険性は十分ある。中国本土では感染症に対する検疫体制は整っていますが、潜伏期間がある以上は完全に防ぎきれるものではありません。もし1人でも入ってきたら、感染拡大をしばらく止められないでしょう」
中国本土への感染拡大があるとすれば、エボラ出血熱の日本上陸リスクは一気に高くなる。日本人の往来がほとんどないはるか遠い西アフリカで流行するのと、年間100万人単位で渡航者の行き来がある中国にやってくるのでは、状況が全く変わってくる。
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アルファルファモザイク
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